種蒔く人。(前編)

種蒔く人。(前編)
こんばんは。

どうしても紹介したいブランドがもう一つ。

この22-23AWよりお取扱が始まった
Sasquatchfabrix. (サスクワッチファブリックス.以下、サスク)

デザイナー・横山 大介氏により2003年にブランドをスタート。
ファッションとは時代の民度を強く反映させたものであり、そうあるべきものだと考えます。
常に前衛的でなければならないものであります。
私たちなりの「ファッション」を表現する ために、その時代に対して、強度のあるテーマを設定し、
クラシカルの肯定と否定を繰り返しながら前衛的で「遊び心」のある洋服づくりをしています。
Sasquatchfabrix.公式ホームページより。

Supremeやステューシーともいち早くコラボレーションを果たした日本の伝説的なブランドです。
わざわざ僕が説明する必要もないぐらい
知名度があり、偉大なブランドです。

サスクを仕入れるに至った経緯は他のブランドとは異なり
友人が働くセレクトショップのメンズがなくなるということもあり
CWに引き継ぐ形でお取引させて頂くことになりました。

そんな彼は今、東京でセールスをしているのですが
10年来の友人で大阪で共にファッションを盛り上げようと
熱く語り合った同士で。

盛り上げたい。というと
囃し立てる様な熱狂を意味するようにも捉えられてしまうかもしれませんが
僕の思う彼の印象はブランドの魅力を出来る限り正確に伝える、作り手の忠実な代弁者。
というのが率直な感想です。
 
知識量、着こなし、そして何よ人柄の良さが滲み出る彼の接客は
多くの人たちに支持されていて、まさにカリスマでした。
そんな彼から大阪でこのブランドを引き継ぐことが出来るのは
僕以外にいないなという自信もありますが
実はその反面、大きな責任も感じています。
 
彼の存在は友人としても、同じ販売員バイヤーとしても僕の中では大きな存在で
何より独自のバイイングをしていきたい理想とプライドがあった人物だったからです。
なので、彼のようにはいかなくとも
僕なりに何か別の形でブランドの良さを伝えていきたいと思っています。
 
さて、ここからは僕が持つブランドへの私見と今シーズンのテーマについて少しだけお話しさせていただきます。

サスクの衝撃を最初に感じたのは12-13AWコレクション。
当時まだ学生だった僕は
裏原の影響を受け、進化する東京ファッションの渦中にいて。
その熱をただぼんやりと感じているだけでした。

東京ブランド。というだけで世界のファッションに影響を与えられる様な混沌と、同時に感じる高揚。
その中でも抜きに出た存在がサスクでした。

ジャパニーズカルチャーと異国カルチャーをミックスさせたコレクションを次々に発表。
数ある東京ブランドの中から異彩を放つ唯一無二の立ち位置を確立していました。

その後、東京ファッションの熱が落ち着いてからも
その前衛的なスタンスを崩さず、どこまでも自由な表現方法で
今でも魅力的なコレクションを発表し続けています。

過去のコレクション。
Sasquatchfabrix. 15-16AW LOOK画像
Sasquatchfabrix. 12-13AWのLOOK
ファッションスナップドットコムより

さて、ではなぜ【今】CWでサスクをはじめたいと思ったか。
それは昔好きだったブランドだから。
紹介してもらえたから。
 
だけではなく。
   
2020年。世界は一度閉ざされました。
情報が溢れる社会になって、世界が開かれ、むしろ積極的に近づいて来てくれた様な気がしていたのに。
感染症の蔓延により、不条理に世界が閉ざされた瞬間。
近くにいる人たちの優しさや大切さに改めて気付かされた様に。

人的な交流がなくなったことにより、遠い異国に対しての興味関心は薄れ
興味が向かった先は内なる世界でした。
ファッションはもちろんアートも民芸品や工芸品。日本画に仏寺。
僕たちの身近にはとても優れた作品がこんなにも溢れていて
ずっとそばにあったはずなのに。
近すぎて、後回しにしてしまっていたことに気付かされました。
日本で育ったからこそわかる美的感覚があるのではないか。
今の日本で、日本の文化を踏襲した物作りが。被服がどれだけ存在するか。
街中で来ている人がどれだけいるのか。

今、また世界が開かれ
今後の僕らのファッションになにが必要なのか。
本当に大切にしなければいけないものは何なのか。
日本のカルチャーを日本人として自身がもう一度再考しても良いのではないのか。

年齢のせいかもしれませんが、自国の文化を国内外に発信して行きたいとか。
自分自身が日本人なので日本の文化をより理解する才能というか
素養が他の国の人よりもあるのじゃないかと思ったのがきっかけでした。

もちろん、紹介してくれる人がいたというタイミングもありましたけどね。

そして何より今日着たい、明日も着たいと思えるファッションとは何か
という点を鑑みても
色鮮やかに時代の空気を反映しかつ、僕ら日本人が持つ潜在的な美意識に訴えかけることができるのは
僕が知る限りはサスクだけでした。

このブランドをCWでセレクトすることは必須であり
お店に今現在並んでいることはとても意味のあることだと思っています。

本当は今シーズン22-23AWのテーマ『労働者を大切に』について書きたかったのですが
長くなりすぎたので、今日はこの辺りで。

後編に続く。