EXHYPNOSIS by Dylan Solomon Kraus

アメリカ人アーティスト、ディラン・ソロモン・クラウス（Dylan Solomon Kraus）の作品集。2023年4月から6月までベルリンの「ペレス・プロジェクツ（Peres Projects）」で開催された展示に伴い出版された。

「ExHypnosis」とは作者が作り出した言葉であり、概念としては「めざめる」と訳され、作者の絵画に見られる夢のようにおぼろげなシナリオによってさらに強調されている。反復することが重要であり、宇宙的な時計塔や水没都市など繰り返し登場するモチーフが、新洗礼者や薮の中の鳥というデジャヴュの瞬間と舞い踊る。本書は、過去4年間にわたって制作された作者の絵画作品の選集であり、作者の自己とその活動における旅程の記録である。

「ペレス・プロジェクツ」と共に開催した三度目の個展を通じて、世界をめざめさせるために作者は催眠とその対となるものの概念を探求する。ベルリンでの初展示であり、ちょうど「Berlin Gallery Week」と同時期に開催された本展は社会への警鐘となった。その対象物をトランス状態に置き、取り巻く世界との繋がりを絶たせ、思考させない自動機械に仕立てあげる催眠の概念に対するアンチテーゼである本作は、主体性を呼び覚ますものである。あてもなく人生を歩ませるシステムに、ショックを与えているのだ。

作者は、「ExHypnosis」という題名にまで連なる絵画のコレクションの中でこの概念を探った。ハイキングやキャンプをしながら育った作者は、常に地球や星々、自然の環境の精霊との繋がりを感じていた。自身の根底となる明澄な空間として、天体と大地の存在が取り込まれている。ひとつひとつのピースがそれぞれに命を持ち、オーディエンスに向けて強烈なメッセージを送り、それを見る目と深く繋がりあってみせる。この世のものでないようでいながら人間的条件に根付いた作品たちは、注意深く考え、私たちの世界について意義のある会話をなすための場を作り出している。現実空間に置かれた想像上のシンボルたちに眼を向けることで、真実と虚構の間の隔たりに橋が掛けられるのだ。