size:280 x 240mm
hardcover
96 pages
アメリカ人アーティスト、スタンレイ・ホイットニー(Stanley Whitney)の作品集。ざっくりと描いた碁盤の目状の構成を用いた多種多様な実験を30年以上に渡って続け、そこから色の順序についての独自の規則を作り上げた。調和あるいは対照的な関係性を想起させるために、作者は色とりどりのブロックや線を三段あるいはそれ以上積み重ねて抽象的な構成を作り、その内側に色をバランス良く配置していく。こうした色の要素の間には多様に異なる緊張関係や境界線が生まれるため、無限の組み合わせを作りだすことができる。その一方で、それぞれの作品の最終的な構図は、トレードマークである長方形の相対的な密度、透明度、ぼかしの具合によっても左右される。この絵画の特性を持ったモザイク模様の制作プロセスは、常にコンディションを最適な状態に保つ努力を怠らないアスリートにも通じる、継続的な微調整の一形式であると作者は語る。このことはおそらく芸術的な「鍛錬」の最も正しい定義と言えるのかもしれない。キャンバスに向かって行うパフォーマンス的な「ダンス」しかり、音楽における「掛け合い」に近い方法で隣り合う色を決定する「コール・アンド・レスポンス」技法しかり、作者の生み出すものは音楽との強い結びつきがある。キャンバスいっぱいに色や形が躍る絵にはポリリズムや共感覚的に近いものがあるが、作品の出典としてジャズやアフリカンミュージックをよく挙げている。とはいえ、絵画の歴史とも決して消えることのない繋がりを持つ作者は、チャーリー・パーカーやオーネット・コールマンの曲を口ずさむのと同じくらいやすやすとセザンヌやヴェロネーゼを引用するのである。本書は2016年5月20日から7月2日までロンドンの「Lisson Gallery」で開催された展覧会に伴い刊行された。